天に広がる青い空、空でつながる広い世界。
「蒼天（そうてん）」という店名には、青空のように明るい店で、自分の料理を広めていきたいという長谷部智彦シェフの想いが込められています。

広大な国土を持つ中国では、四川や北京などそれぞれの地域の郷土料理があり、多様な食文化が築かれてきました。「蒼天」の長谷部智彦シェフは、中国料理の技法をいかし、地元山形の食材を使った料理で腕を振るっています。

メニューは麻婆豆腐や回鍋肉、八宝菜などの定番から創作まで豊富で価格もお手頃。コース料理も人気ですが、単品をみんなで取り分けて食べるのもおすすめです。「食事は静かに行儀よく、ということがマナーのように言われてきましたが、料理もお酒も会話も楽しみながら過ごしてほしいと思います。それが何よりの贅沢な食事の時間ですから」。

長谷部シェフは修業先のレストランで中国料理の師匠と出会い腕を磨きました。独立後は、地元の人たちにもっと中国料理を知ってほしい、県外から訪れる方にこの地域を知ってほしいと、地元の旬の食材と、中国の調味料を使い、日本人好みにアレンジした味に力を入れてきました。

「ラーメンやギョーザしか食べたことのないという方々に、手頃に中国料理を提供するにはどうすればいいか。そこで考えたのが、人件費などを抑えて、リーズナブルに提供することでした。私たち料理人はお客さんのお腹を満たすだけでなく、心を満足させることが仕事ですから」。

米の娘ぶたを選んだのは、やわらかくて臭みが一切なく、アクが出ないのが決め手

「山形の食材だけでどんな料理でも作れる」と話す長谷部シェフは、畜産の歴史の長い山形県で「米の娘ぶた」を選び、デビュー当初から使用してきました。酢豚、豚肉とにんにくの芽の炒め、ナスと豚肉の唐辛子煮、焼きそばやチャーハンなどじつに多くのメニューで「米の娘ぶた」を味わうことができます。

「やわらかくて臭みが一切なく、アクが出ないのが決め手でした。筋肉質のうで肉でも、しょうが焼きにしたら他の部位に負けないおいしさが出ますし、揚げてもやわらかいまま。バラ肉は特に甘くて、シチューやカレーに入れるとよく分かります。雑味がないので、下処理の時間が短縮できるのも大きいですね」。「中国黒酢の酢豚」には、やわらかな食感を味わってもらえるように肩ロースを使用。中国から取り寄せた黒酢を使って本場の味を醸し出しています。

伝統にある他国の食文化を通して、郷土の味を味わってほしい

食材も、人も、方言もすべてその土地に来てこそ味わえる“贅沢な時間”のエッセンス。「地元は誇り」と話す長谷部シェフの料理からは、伝統のある他国の食文化を通して郷土の食を味わってもらいたいという、心満たす食の楽しさが伝わってきます。