庭園と邸宅の中で着物をまとい、日本文化に親しむ宿泊施設「NIPPONIA 白鷹 源内邸」。地域の風土や歴史、文化を料理に表現した「ローカルガストロノミー」を実践するその食卓がなつかしく新しい、ここでしか味わえない時間を演出しています。
「NIPPONIA 白鷹 源内邸」は、着物という古来の衣服を通して、日本文化を楽しみ、非日常の時間を過ごす「きもの・リトリートホテル」。地元の名家の邸宅をリノベーションし、2021年4月に開業しました。
もとの「旧奥山源内邸」は明治中期から大正初期に建てられた地元の名士の邸宅で、点在する蔵の造りや建材、調度品などが歴史の面影を感じさせます。宿泊客はチェックイン後、着物に着替え、庭を散策したり、趣向を凝らした客室にゆっくり籠ったりと、思い思いに自分と向き合う時間を過ごせる場所です。
上杉鷹山の教えが息づく食文化を、置賜の自然の恵みとともにフレンチにアレンジ
吹き抜けのダイニング「纏 matoi」は築120年の味噌蔵。ここでは置賜の自然の恵みと江戸時代から続く食文化を、フレンチと融合させたメニューで味わうことができます。「この地域を訪れるからこそ食べられる味」を大切に、食材はシェフの横澤充洋さんが自ら生産者や産直から仕入れるほか、ご近所さんからワラビ採りに連れて行ってもらったり、敷地内で山菜や筍、山椒などを調達することも。
「上杉鷹山公が推奨した『かてもの』の文化には先人の知恵が詰まっていて興味深く、お客様にも喜んでいただいています」。「かてもの」は飢饉などの際、身近な山野の野草を救荒食材として調理法をまとめた鷹山公の大著です。シェフは、春には置賜の伝統野菜「ウコギ」を20種類の野菜とテリーヌに。「スベリヒユ」の保存食「ひょう干し」は、マデイラ酒と合わせてソースにするなど、古今、和洋を取り合わせて、置賜の食文化の伝承を試みています。
どんな料理にも合う『米の娘ぶた』。脂のおいしさがシンプルな味付けでも最高のメニューに仕上げる
そうした伝統食材をはじめ、多種多様な旬の食材を使う中で、「『米の娘ぶた』はどんな料理にでも合います」と横澤シェフ。特に好きな部位は肩ロースとバラで「肩ロースはほどよく脂が入っていてうま味が強く、食感と味のバランスが絶妙です。『米の娘ぶた』はとにかく脂がおいしいので、バラ肉はベーコンに。シンプルな味付けで最高のメニューが完成します」。
源内邸では宿泊客以外でも、朝食やディナーの予約が可能です(2日以上前に要予約:2021年7月現在)。でもせっかく訪れるなら宿泊がおすすめ。「白鷹には、かつて舟運で運ばれていた紅餅を包む『深山和紙』の伝統が今も残っています。少し足を延ばせば米沢の城下町の観光や、長井の絶景、三淵渓谷での水上ボート体験も。食、歴史、文化など、ここを地域の魅力をつなぐ起点にできたらと思っています」。
日本、そして山形の良さを再認識する旅へ。リトリートに出かけたい、今年の夏です。
「米の娘ぶた」のわら焼きベーコンと
ホヤ・ワラビ・筍のパセリバターソース
シェフの前任地である宮城の「海」と、白鷹の「山」を融合した一皿。竹皮とホヤの殻を器に、ホヤ、筍、一本漬けのワラビ、「米の娘ぶた」のわら焼きベーコンをソテー。山海の幸が香りよくつながり合う、食の新体験です。
シェフ 横澤 充洋 さん
長井市出身。高校を卒業後、調理師学校に進学。洋食やスイーツに面白さを感じて食べ歩きをしながら勉強。卒業後はホテルやレストランで修業を重ねる。2020年に自分の店を持ちたいと山形に帰郷。「NIPPONIA 白鷹 源内邸」のプロジェクトとそのコンセプトに共感、以来シェフとして腕を振るう。地域の食材と食文化を生かしたフランス料理で、郷土の味の伝承に努めている。
取材・文=阿部 薫
NIPPONIA 白鷹 源内邸
山形県西置賜郡白鷹町浅立183-1
Tel.0238-87-3150
お店に聞いた「米の娘ぶた」
おすすめレシピ
「米の娘ぶた」の生ベーコンとお米のサラダ仕立て ヨーグルトソース
お米とホエー(乳清)を食べて育つ「米の娘ぶた」。横澤シェフがそのストーリーを背景にしたサラダのレシピを教えてくれました。生ベーコンの脂のうま味と、ゆでたお米のユニークな食感が、見た目も華やかに食卓を盛り上げてくれます。
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【A】
- 豚バラブロック 100g
- 塩 1〜2g(お好みで)
- こしょう 適量
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【B】
- レモン汁 50g
- 塩 5g
- オリーブオイル 100t
- こしょう 適量
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【C】
- ヨーグルト 50g
- Bのドレッシング 15g
- 米 50g
- ミニトマト 2〜4個
- パセリ 適量
- きゅうり 1/4本
- サラダ 適量
- パルメザンチーズ 適量
- 【A】の豚肉に塩、こしょうをして、一晩冷蔵庫で寝かせる。
- 【B】と【C】の材料をそれぞれボウルで合わせる。
- お鍋にお湯を沸かし、米を15分ゆでる。ザルにあけて水で軽く洗い、粗熱をとったらBを10g混ぜ合わせる。
- ミニトマト、きゅうり、パセリは小さく切ってBと合わせる。
- @を薄切りにして、熱したフライパンでソテーする。
- お皿にCのドレッシングとサラダと一緒にCとDを盛りつける。パルメザンチーズをかけてできあがり。
「米の娘ぶた」の肩ロース肉
そばとローズマリーのクルート焼き
ひょう干しソース
厚めの肩ロース肉の表面をフライパンでこんがり焼き、オーブンでさらに焼き上げて、中はしっとりジューシーに。“隠れそばの里”白鷹町のそば粉にローズマリーとパン粉を合わせた生地をのせて。酸味のあるひょう干しとマデイラ酒のソースでいただきます。