鶴岡市の銀座通り、ソースの香りに誘われて「西洋酒菜ファーストポイント」へ。旬の食材のおいしさ、食肉や魚の部位ごとのおいしさ、一つ一つの食材の持ち味を生かしたメニューで人々に長く愛され続ける洋食店の味を楽しみました。
「今日は何がおすすめ?」と常連さんの声。カウンター越しの厨房ではシェフが腕をふるい、店内は食欲をそそる音と香りに包まれて、気軽なビストロの雰囲気が漂います。
「西洋酒菜 ファーストポイント」が開店したのは昭和60年代の初め。30余年来、“まちの洋食屋さん”として長く愛され続けてきました。シェフの村田保弘さんは、子どもの頃に見た帝国ホテルのレシピ本に興味をひかれ、忙しい両親に代わって夜ごはんを作っていたそう。それが料理人を志すきっかけとなりました。
料理は食材が7割、「米の娘ぶた」の脂のおいしさと肉のうま味を生かす料理を。
メニューは創業以来の人気を誇るシーフードのペンネグラタンや山形牛のステーキピラフなどのフレンチ&イタリアンから、ハンバーグやビーフシチューといった洋食屋さんの定番まで、旬の地元の食材がふんだんに使われています。
この日のおすすめは「米の娘ぶた」のバロティーヌ。肉や魚に詰め物をして蒸すフランス料理で、鶏肉を材料にしたものがよく知られていますが、こちらのレシピは「米の娘ぶた」のひき肉とバラ肉を使ったオリジナル。2種類の部位の特長を引き出した一皿です。
「『米の娘ぶた』はとにかく脂身がおいしい。また、部位によって揚げたり焼いたり蒸したりと、どんな料理にも合います。ふっくら、こんがり、ジューシー、それぞれ調理した時の食感もいいですね」。
夏は夏野菜と一緒にグリルにしたり、冬は煮込み料理にしたりと「米の娘ぶた」をさまざまに料理する中で、シェフが特においしいと話すのは「肉のうま味と脂を全部閉じ込めたカツレツ」だそう。他にもブロック肉を塩水に漬け込むヨーロッパの保存食「塩豚」のソテーも「米の娘ぶた」の良さを引き出しています。「この脂のおいしさと肉のうま味を伝えるために、余計な調理や味付けはしません。料理は食材が7割といいますが、『米の娘ぶた』をはじめ、庄内の食材の質の良さを生かすことを大切にしています」。
洋食の味を伝えるため、お客さんが親しみやすい店と味を守り続ける。
洋食が日常になるような楽しさと気安さがあるこちらのお店。村田シェフはメニューを考える際に、お客さんが想像しやすいメニュー名で、親しみやすい味にしようと工夫しているそうです。「洋食の味を伝えていきたい」という村田シェフの料理からは、時代と共に進化しながら、変わらない良さを保ち続ける「おいしさ」が伝わってきます。
「米の娘ぶた」肩ロースの黒ビール煮
ベルギーの郷土料理、カルボナードを「米の娘ぶた」で。塩こしょうで味を付けた肉をオーブンに入れ、黒ビールを加えて蒸し煮に。そのコクと甘みはついついワインが進む味。
シェフ 村田 保弘 さん
鶴岡市出身。高校を卒業後、上京して就職。中学生の時に帝国ホテルの料理長を務めた村上信夫氏の本を読んで以来、料理人に興味を持ち続け、25歳で帰郷すると酒田調理師専門学校に入学。その後、鶴岡市内のレストランで修業し、昭和62年に「西洋酒菜 ファーストポイント」をオープン。洋食になじみのなかった人も足しげく通う洋食店として、老若男女に親しまれている。
取材・文=阿部 薫
西洋酒菜
ファーストポイント
山形県鶴岡市本町1丁目6-13
Tel.0235-24-9038
営業時間/
11:30〜14:00(L.O 13:30)
17:30〜21:00(L.O 20:00)
定休日/
不定休(Facebook、Instagramで情報を発信しています)
お店に聞いた「米の娘ぶた」
おすすめレシピ
「米の娘ぶた」ロース肉の薄切りソテー きのこと粒マスタードのソース
村田シェフが「身近な調味料を使って、簡単だけどフレンチっぽい」ソテーを教えてくださいました。辛みが少なく酸味のある粒マスタードクリームソースはさまざまなグリルにも活用できます。ぜひご家庭の定番に!
- 米の娘ぶたロース肉(とんかつ用) 2枚
- バター 15g
- 塩こしょう 少々
-
【付け合わせ】
- しめじ 1/4房
- ほうれん草 1/4束
- 塩こしょう 少々
- サラダ油 少々
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【マスタードソース】
- 玉ねぎ(みじん切り) 30g
- 白ワイン 50cc
- 生クリーム 70cc
- 粒マスタード 大さじ2
- バター 10g
- 塩こしょう 少々
- 豚肉の脂身と赤身の間を包丁の先で叩いて筋を切り、塩こしょうで下味をつける。
- ほうれん草はゆでて水気を切り、3cm幅に切る。しめじは小房に分ける。どちらもサラダ油で炒めて、塩こしょうで下味を付けておく。
- フライパンにバターを入れて中火で熱し、@の豚肉の両面を焼く。うっすらと肉汁が出てきた時にひっくり返すのがポイント。しっかりと火を通したら皿に移す。焼きすぎると硬くなるので注意!
- 豚肉を焼いたフライパンの油をキッチンペーパーなどで軽く拭き取り、マスタードソースを作る。フライパンにバターを入れて中火で熱し、玉ねぎを炒める。玉ねぎが透き通ってきたら白ワインと生クリームを入れて少し煮詰める。最後に粒マスタードを加え、塩こしょうで味を調える。
- Bの豚肉にCのソースをかけて、付け合わせを添えて出来上がり。
「米の娘ぶた」のバロティーヌ
赤パプリカのソース
ひき肉とくるみとほうれん草を合わせたものをバラ肉で巻いて蒸し、こんがりと焼き色を付けた創作バロティーヌ。くるみの食感ときのこの風味が「米の娘ぶた」の肉汁と相性ぴったり。